第55回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第16回広大ACEセミナー)が開催されました

■第55回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第16回広大ACEセミナー)が開催されました

(English announcement can be found in the latter half of this notice.)

日時 2017年 7月 19日(水)16:20~17:50

会場 広島大学東広島キャンパス工学部110講義室

プログラム

解説 広島大学大学院工学研究科  教授 松村幸彦

講演 広島大学大学院工学研究科 M2  Tanawan CHALERMSAKTRAKUL

「キシロースの酢酸添加による水熱処理」

 ヘミセルロースのモデル物質であるキシロースの水熱ガス化は、連続流動反応器を用いて酢酸の存在下で高温高圧下(350,400,450℃、25MPaまで)で行いました。酢酸は有機化合物の一つであり、環境に優しく、低腐食性であり、またヘミセルロースガス化の副生成物でもあるので、キシロースの超臨界ガス化における各反応の挙動をよりよく理解する触媒として選択されました。本研究では、酢酸を添加した場合と添加しない場合のキシロース分解の反応速度定数を比較することを目的としました。滞留時間の影響を決定するため0.5から5秒まで変化させました。キシロースの濃度は1.5重量%の酢酸と混合した1.5重量%でした。キシロースの超臨界ガス化で酢酸を添加するとラジカルスカベンジャーとして作用してH+となり、ラジカル反応であるレトロアルドール反応と炭素ガス化生成が抑制されました。一方、キシロースとキシルロースのフルフラールへの脱水は著しく促進されました。亜臨界と超臨界とは小さな違いがあります。亜臨界条件下では酢酸の効果でキシルロースからの脱水反応の方がシロースからの脱水反応より早く促進させることができると分かります。一方、超臨界条件下では酢酸の効果でキシロースからの脱水反応の方がシルロースからの脱水反応より早く促進させています。

講演 広島大学大学院先端物質科学研究科  D3    Mattana TUNCHAI

「植物病原菌の挙動を攪乱する革新的な感染制御手法」

Ralstonia solanacearumは世界中の各種商業作物を枯らす植物病原菌です。細菌の走化性(化学物質への走性行動)により、病原菌が植物根周辺に引き寄せられて移動します。これが植物枯死の初期段階として重要であることと考えられています。そこで、この走化性行動を攪乱することにより植物への感染を遅延、抑制することができるかもしれないと考えました。R. solanacearumが誘引、もしくは忌避する物質を見いだした後、トマト植物への感染を抑制する物質の検討を行いました。その結果、植物病原菌が根に誘引される物質の一つであるリンゴ酸が感染を抑制する有望な物質であることがわかりました。

講演 広島大学大学院先端物質科学研究科  M2  Luo GONGLINFENG

「低温菌シンプル触媒によるカルボン酸生産」

バイオマスから付加価値のある化学品を生産するのは石油に依存しない化学工業を創出できる有望な手段です。有機酸、特にTCA回路に含まれるカルボン酸は化学工業で広く応用できます。現在工業的に生産されているカルボン酸の種類は限られています。カルボン酸は色んな代謝産物の中間産物や前駆体であり、細胞内での大量蓄積やトランスポートは困難であるため、宿主由来の代謝酵素がカルボン酸の高生産を阻止しています。我々は30度以上で生育不可能の低温菌を宿主として生体触媒を構築しました。宿主の代謝酵素を失活させることと膜透過性を改変することによってより良い収率と基質との接触を改善して、効率的なカルボン酸生産触媒の構築を進めています。

講演 広島大学大学院工学研究科  D3    Paksung NATTACHA

「超臨界水におけるグルコースの分解及ぼすフェノールの影響」

 バイオマスを効率よくエネルギーに変換する技術の一つに超臨界水ガス化があります。この技術は高温高圧条件下での熱水反応を用いたエネルギー回収法で、水中で処理を行うので、原料のバイオマスが水を含有していても問題はなく、高い反応性を持っています。さらに、乾燥プロセスが必要でなく、水素収率が高いため、有望な技術であります。本研究ではバイオマスのモデル物質としてグルコースを用い、超臨界水におけるグルコースの分解及ぼすフェノールの影響に注目しました。実験条件は反応温度350-400 oC、圧力25 MPa、滞留時間1-40 sとしました。炭素収支をとるため、ガス、液体、固体中の炭素量を測定し、反応速度定数をそれぞれ求めました。

司会 広島大学大学院工学研究科  客員研究員  Obie FAROBIE