第79回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第59 回広大ACEセミナー)を開催しました。

第79回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第59 回広大ACEセミナー)を開催しました。

日時 2019年11月18日(月)16:20~17:50

会場 広島大学東広島キャンパス工学部110講義室

 

プログラム

解説 広島大学大学院工学研究科  教授 松村幸彦

 

講演 広島大学大学院工学研究科 外国人客員研究員 Noah Luciano TAUFER

「肥料の水熱炭化と液体生成物の超臨界水ガス化に関する実験的調査」

 

現在,世界的に再生可能エネルギーを発見し活用するニーズが高まっています。気候変動は世界的に直面している解決すべき問題です。この理由からバイオマス,風力,水力はエネルギー市場において大切な足がかりとなっており,大衆の合意や国からの助成金を得られています。このうち,バイオマスは一番広く広まっているだけでなくすでに石炭,石油,天然ガスに次ぐ4番目に使用されているエネルギー源です。しかしながら,古典的な熱化学処理によって必ずしも有効に活用されるとも限りません。実際,多くのバイオマスは高含水率であるため,適切な方法で処理する必要があります。水熱処理は含水性バイオマスを処理するのに一番効果的な解決策です。この研究では高含水率という特徴を持つ牛糞肥料の嫌気性消化残渣に対する水熱炭化(HTC)の効果を明らかにしました。水熱炭化は温度180, 220, 250 ˚C,滞留時間3 h,自生圧力下で行われました。主要生成物であるハイドロチャー(固体)や液体サンプルは抽出,分析をしました。また,廃棄物を最小にするためと水素を豊富に含む有用なガス生成をするために,次のステップとして液相の超臨界水ガス化を行ないました。この処理には連続式流通反応器を使用し,温度600, 550, 500 ˚Cで滞留時間は最適滞留時間を確認するため,変化させて行ないました。この実験で得られた固体,液体,ガスサンプルについて回収し分析を行ないました。

 

 

講演 広島大学大学院工学研究科  M2   横山 裕生

「微小時間でのグリシンの超臨界水ガス化における窒素挙動」

超臨界水ガス化はバイオマスを素早く,ほぼ完全に変換することができるため注目されています。亜臨界状態でのアミノ酸の分解についての報告はいくつかあり,イオン反応が主に起こっているとの見解が得られています。その一方で,超臨界水ガス化によるグリシンの分解はそのほとんどが5 s以内に行われるにも関わらず,これまでに5 s以内で実験が行われた報告はありません。そのため,私たちは5 s以内でのグリシンの超臨界水ガス化実験を行いました。実験は管式流通反応器で25 MPaで行い,グリシンをタンパク質のモデル物質として使用しました。

 

講演 広島大学大学院工学研究科  D3   Rahmat Iman MAINIL

「パーム油工場廃水の超臨界水ガス化に及ぼす加熱速度の影響」

パーム油工場廃水(POME)は、パーム油生産からの問題のある廃棄物です。適切な管理が行われないと、深刻な汚染を引き起こす可能性があります。バイオマス廃棄物をエネルギー源として利用するために採用されているいくつかの技術の中で、超臨界水ガス化(SCWG)が最も有望な候補です。 SCWGは、高温の圧縮水でバイオマスをガス化する技術です。ガス化は迅速であり、高い炭素ガス化効率(CGE)を達成できます。 CGEは、原料の加熱速度の影響を受けることが知られています。ただし、POMEの変換に対する加熱速度の影響はまだ理解されていません。この効果を研究するために、POMEを600°Cの一定温度で25 MPaの制御された圧力の連続フロー反応器で処理し、さまざまな予熱器長(1、2、4 m)で処理しました。結果を比較することにより、CGEおよびリン転化率に対する加熱速度の影響が明らかになりました。

 

講演 広島大学大学院工学研究科    D3   Puji Rahmawati NURCAHYANI

「微細藻類Chlorella vulgarisのリン消費とバイオマス生産性に対する栄養濃度の影響」

微細藻類は、陸上植物に比べて速く成長する光合成バイオマスです。成長期には、これらの緑藻は窒素、リン、カリウムを主成分とする栄養素を必要とします。しかし、これらの栄養素の消費行動はよく報告されていません。そのため、この実験では、バイオマスを成長させるための緑藻類Chlorella vulgarisのリンの取り込みを調査するよう設定しました。培養は、900 mlの容量のバッチ式反応器で行いました。室温は20 oCに制御され、通気は3 ml / minの流量でリアクターに供給され、光強度は24時間の光周期で3.42 µmoles / m2 / sでした。使用した培地濃度は、10、50、100、200、および500 ppmでした。培養期間中、微細藻類のサンプルは3日ごとに1回採取され、40日目に停止されました。サンプルあたりの細胞重量を分析しました。それ以外は、モリブデンブルー法を用いて培地中のリン含有量を分析しました。その結果、100 ppmの栄養濃度で最大のバイオマス生産性が得られましたが、この濃度でのリンの消費は他の濃度よりも速くなりました。さらに、高濃度のリンを使用すると、微細藻類細胞の成長が阻害される可能性があります。

 

司会 広島大学大学院工学研究科  教授 松村 幸彦