■第60回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第25回広大ACEセミナー)が開催されました
(English announcement can be found in the latter half of this notice.)
日時 2018年 1月 11日(木)16:20~17:50
会場 広島大学東広島キャンパス工学部110講義室
プログラム
解説 広島大学大学院工学研究科 教授 松村幸彦
講演 広島大学大学院工学研究科 M2 木原 潔人
「溶解セルロースにおける酵素加水分解速度」
木質系バイオマスからバイオマスエネルギーを生成するプロセスの1つである酵素加水分解は、コストと時間がかかるという課題を持っています。そこで高温高圧水中にセルロースを溶解させることでプロセスの効率化を図り、またその反応モデルを考察しました。水熱溶解セルロースは300 oC, 15MPa条件で生成され、酵素加水分解は72 hの間それぞれの時間にサンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量されました。
講演 広島大学大学院工学研究科 M2 菱田 賢吾
「水熱ディスクミル粉砕における初期粒径とディスク間距離の影響」
リグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを生成する過程において、前処理は最終的なエタノール収率を左右する重要な過程です。本研究ではディスクミルを用いた水熱粉砕処理において、初期粒径とディスク間距離が及ぼす影響について調査しました。各ディスク間距離によって、最適な初期粒径は異なったという結果が得られたが、これは反応器内において異なる粉砕メカニズムによって粉砕されているからであると考えられます。
講演 広島大学大学院先端物質科学研究科 D3 Farida RAHAYU
「Moorella thermoaceticaのエタノール産生形質転換体によるリグノセルロース加水分解産物からの好熱性エタノール発酵の最適化」
2つのホスホトランスアセチラーゼ遺伝子 pdul1 および pdul2 を欠損させ、プロモーター によって制御された本来持つアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(aldh)をグリセルアル デヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼから導入することにより、リグノセルロース系バイオマ スからの好熱エタノール生産のための Moorella thermoacetica の形質転換体を構築しました。 形質転換体は、リグノセルロースの酸加水分解によって処理された加水分解物中の糖をエタノールに変換する発酵に成功し、この結果はこの形質転換体をエタノール生産のためにリグノセルロース系バイオマス中の糖を発酵させるのに用いることができることを示唆しています。本研究では、形質転換体を使用して、実際のリグノセルロース原料からエタノールへの加水分解物の発酵能力を決定し、3種類のリグノセルロース加水分解物について発酵試験を実施しました。3種のリグノセルロースは杉由来の木質、森林の残渣および稲の藁であり、168 時間、55℃が発酵の最適条件です。我々が現在得ている知見は、遺伝子組み換えされた M. thermoacetica による好熱性発酵が、リグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造するための実現可能なプロセスであることを実証しました。
講演 広島大学大学院工学研究科 M2 Kunassanan Siribunyaroj
「超臨界水ガス化におけるグリシン分解」
近年、地球温暖化や化石燃料の枯渇による再生可能エネルギーに注目が集まっています。再生可能エネルギーの中でバイオマスからのバイオエネルギーという選択肢があります。含水性バイオマスを再生可能エネルギーに変化する方法としては超臨界ガス化が有効な技術の一つの方法です。超臨界水の条件は温度が374度で圧力が22.1メガパスカルになります。既往の研究では、超臨界水ガス化に置けるアミノ酸分解の挙動を解明するためにグリシンが使われています。グリシンを選んだ理由は、グリシンはもっともシンプルなモデル化合物であるからです。しかしながらこの研究はガス化率を示しただけであり、グリシン分解反応の完全な解明のためには窒素および炭素化合物の挙動を解明することが必要です。だから、グリシン分解における超臨界水ガス化の様々な条件下で窒素と炭素の挙動を解明することを目的にしました。この実験は管型反応器が使われています。実験条件は温度が450度、圧力が25メガパスカル,滞留時間が5秒、原料濃度が1-5wt%になります。この実験によると、グリシン分解物における窒素化合物のほとんどがアンモニアおよびメチルアミンとして存在していました。この実験では、二酸化炭素、水素、メタンが主要な気体生成物でした。
司会 広島大学大学院工学研究科 研究員 Nattacha PAKSUNG