■第62回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第29回広大ACEセミナー)が開催されました
(English announcement can be found in the latter half of this notice.)
日時 2018年 3月 2日(金)16:20~17:50
会場 広島大学東広島キャンパス工学部110講義室
プログラム
解説 広島大学大学院工学研究科 教授 松村幸彦
講演 広島大学大学院工学研究科 M2 伊藤 大志
「水熱前処理におけるコンブ細胞および有機物の挙動」
コンブはマンニトールやアルギン酸など発酵可能糖を含む再生可能エネルギー資源として有用な物質です。しかしこのような有機物の多くはコンブの細胞内または細胞壁に含まれています。水熱前処理は細胞構造を破壊し有機物を取り出すことができます。コンブから適当に有機物を取り出すためには、コンブ細胞がどのような水熱条件下で破壊されるかの知見を得ることは重要です。しかし上記のような研究は未だ報告されていません。本研究ではコンブを、連続式試験装置を用いて水熱前処理しました。圧力、滞留時間は5 MPa、10分で固定し温度を110℃から190℃で変化させました。回収サンプルのうち液相は全有機炭素(TOC)分析、固相は光学顕微鏡を用いて観察しました。水熱前処理後、TOCの値は130℃において上昇しました。固体観察においても130℃における処理物のサンプルの細胞が破壊されていることが確認できました。以上の結果から、コンブの水熱前処理において130℃、5 MPa、滞留時間10分の条件はコンブ内の有機物を取り出すのに有効であることが確認できました。
講演 広島大学工学部 B4 黒木 睦美
1.「キャピラリー管を用いた水熱条件下からの直接サンプリングの検討」
近年、エネルギー需要の増加に伴い、化石燃料の枯渇や地球温暖化が深刻な課題となっています。それゆえ、化石燃料の代替となる再生可能エネルギー源に注目が集まっています。中でも有望視されているのがバイオマスで、特に、非可食部バイオマスから作られた第二世代バイオエタノールが注目されています。しかし、現段階では収率が低く実用化には至っていません。収率をあげるためには高性能の前処理による処理効率の改善が必要ですが、そのためには、短時間に高温で反応場に存在する他の化合物を検出することが重要です。本研究では、キャピラリー菅を用いて水熱条件下でそのような化合物を検出することができる反応場質量(in situ MS)分析システムを開発しています。質量分析に必要な真空圧力まで減圧させ、分析を行うことに成功しました。キャピラリー菅を長くすることにより、より高圧の状態での分析も可能になると考えています。
2.「質量分析法による熱水分解グルコース分解物の定量」
キャピラリーチューブを用いたin-situ質量分析(in situ MS)分析法を初めて開発しました。 In situMS分析は、管状反応器を四重極質量分析器とステンレスキャピラリー管を介して連結することによって行いました。 グルコース分解の生成物をin situ MSにより調べました。 120℃で実験を行い、反応時間は5,10,20分でした。 減圧が成功し、MS分析が行われました。 キャピラリーを長くすることにより、この研究で使用されているよりも高い圧力下での反応にin situ MSを適用すべきです。
講演 広島大学大学院工学研究科 M2 五藤 聡
「超臨界水ガス化反応器に対するスラリー供給に関する考察」
水分を多量に含む含水系バイオマスは処理方法の更なる効率化が求められています。そこで超臨界水ガス化が提案されていますが、実験を行うにあたってスラリー状の含水性バイオマスを均一に反応器に供給する手段は未だ確立されていません。スラリー状の試料を用いた研究は多くなされていますが、その試料の撹拌・供給の過程を正確に記述しているものは見られず、物質収支が報告されていないため、適切な供給方法の確立が求められます。 そこで本研究では、スラリー状の試料の供給システムの検討を行いました。
司会 広島大学大学院工学研究科 博士研究員 Nattacha PAKSUNG