第52回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第11回広大ACEセミナー)を共催しました

第52回広島大学バイオマスイブニングセミナー(第11回広大ACEセミナー)を共催しました。

 

 

日時 2017年 4月26日(水)16:20~17:50

会場 広島大学東広島キャンパス工学部110講義室

 

プログラム

 

司会 広島大学大学院工学研究科  教授 松村幸彦

 

講演 広島大学大学院工学研究科 M2    木原 潔人  

 「カーボンナノチューブ触媒の水熱前処理および酵素加水分解へ及ぼす影響」

 

近年、化石燃料の枯渇を懸念し、代替エネルギーとしてバイオマスエネルギーが注目されています。食料と競合しないリグノセルロース系バイオマスのホテイアオイ注目されており、多くの研究が行われています。リグノセルロース系バイオマスからバイオエタノールを得るために前処理、酵素加水分解、発行といった3つのプロセスを経ています。リグノセルロース系バイオマスは強固な結晶構造を持っており、それを破壊し、酵素加水分解します。この破壊するための処理が前処理であり、水熱前処理は最も用いられる処理の1つです。その処理で多くの研究者は触媒を用いており、その中でもカーボンナノチューブ(CNT)は広い表面積を持ち、硫酸処理されたCNT触媒は前処理において効果があったと報告されています。しかし、その処理後の酵素加水分解への影響は未だ示されてなく、本研究ではCNT触媒の水熱前処理における影響と水熱前処理後のサンプルを酵素加水分解した影響を確認し、さらに水熱前処理の温度影響についても調査しました。ホテイアオイは触媒なし、CNT、酸処理されたCNTの触媒条件で水熱前処理された。温度条件は200 oC 、250 oC 、300 oC であり、目標温度になると速やかに冷却しました。酵素加水分解は温度50 oC で保持しました。酵素はセルラーゼおよびβグルコシダーゼであり、グルコース収率はHPLCを用いて分析し求めました。

 

 

 

 

講演 広島大学大学院工学研究科 D2    Novi SYAFTIKA 

「バイオディーゼル廃棄物を媒体とする米残渣の水熱前処理」

 

農業廃棄物は、ヒトの食糧供給と競合していないため、バイオエタノール生産のためのセルロースバイオマスとしてより一般的になってきています。ライスは、広島県北広島のオアサ(Oasa)の小さな地区を含む日本最大の農産物です。その結果、この地域では籾殻が毎年大量に生産されています。籾殻は、ほとんど未利用のままであり、セルロースを含みます。したがって、それはバイオエタノールに変換される可能性があります。水熱プロセスは、セルロース系バイオマスを、媒体として単独で熱圧縮水を使用しているため、バイオエタノールを含む様々な製品に変換する環境に優しい前処理技術として知られています。しかしながら、研究は、触媒の添加が生成物の収率を改善することを示しました。水酸化ナトリウムのようなアルカリ触媒は、それが低コストの化学物質であり、容易に得られるので、しばしば水熱前処理に使用されます。それにもかかわらず、触媒コストの低減は、バイオエタノールをより経済的に競争させるのに有益であるでしょう。興味深いことに、日本の北広島のオアサ地区では、バイオディーゼルは植物油の廃棄物から製造され、ディーゼルエンジン車に利用されています。このバイオディーゼル生産は、非常に高いpH(アルカリ性)を有するバイオディーゼル廃棄物を生成し、それを環境中に廃棄する前に中和するための処理が必要とされます。本研究では、籾殻の水熱前処理のための市販のアルカリ触媒に代わるバイオディーゼル廃棄物のアルカリ特性を利用する可能性を検討しました。研究は、ステンレス鋼から製造されたオートクレーブ反応器を用いて行いました。実験は150,200および250℃の反応温度、30分の反応時間で実施し、バイオディーゼル廃水の添加をアルカリ触媒有りおよび無しの水と比較しました。前処理の有効性を測定するために、グルコース収率を得るために前処理後に酵素加水分解を使用しました。種々の温度での水熱前処理によるグルコースへの籾殻転換へのバイオディーゼル廃棄物添加の効果が詳述されました。

 

 

 

 

講演 広島大学大学院工学研究科 D3   Nattacha PAKSUNG  

「超臨界水におけるリグノセルロース系のバイオマスのモデル化合物の相互作用」

 

バイオマスを効率よくエネルギーに変換する技術の一つに超臨界水ガス化があります。この技術は高温高圧条件下での熱水反応を用いたエネルギー回収法であり、水中で処理を行うので、原料のバイオマスが水を含有していても問題はなく、高い反応性を持っています。さらに、乾燥プロセスが必要でなく、水素収率が高いため、有望な技術です。本研究ではリグノセルロース系のバイオマスのモデル物質としてグルコース、キシロースおよびグアヤコールを用い、混合物の超臨界水ガス化に及ぼす相互作用を注目しました。実験条件は反応温度350-450°C、圧力25 MPa、滞留時間5-60 sとしました。炭素収支をとるため、ガス、液体、固体中の炭素量を測定し、反応速度定数をそれぞれ求めました。

 

 

 

 

講演  広島大学大学院工学研究科 M2 Tanawan CHALERMSAKTRAKUL

「キシロースと酢酸混合物の超臨界水ガス化」

 

ヘミセルロースのモデル物質であるキシロースの水熱ガス化は、連続流動反応器を用いて酢酸の存在下で高温高圧下(400,450℃、25MPaまで)で行いました。酢酸は有機化合物の一つであり、環境に優しく、低腐食性であり、またヘミセルロースガス化の副生成物でもあるので、キシロースの超臨界ガス化における各反応の挙動をよりよく理解する触媒として選択されました。本研究では、酢酸を添加した場合と添加しない場合のキシロース分解の反応速度定数を比較することを目的としました。滞留時間の影響を決定するため0.5から5秒まで変化させました。キシロースの濃度は1.5重量%の酢酸と混合した1.5重量%でした。キシロースの超臨界ガス化で酢酸を添加するとラジカルスカベンジャーとして作用してH+となり、ラジカル反応であるレトロアルドール反応と炭素ガス化生成が抑制されました。一方、キシロースとキシルロースのフルフラールへの脱水は著しく促進されました。

 

 

 

司会 広島大学大学院工学研究科  客員研究員  Obie FAROBIE